
用言の解説が終わったので、これからは活用のない自立語を解説していきます。
すなわち、副詞、連体詞、名詞、接続詞、感動詞の5つの品詞です。
今回は、副詞の解説をします。
そもそも副詞って何でしょうか?
「副(ふく)」という言葉には「助ける」という意味があります。
副詞もその名のとおり、「ほかの言葉を助ける」役目をする品詞です。
例えば次の文を見てみましょう。
「とても寒い。」
この文では「とても」が「寒い」を強めていますね。
この「とても」が副詞です!
副詞は主に「動詞」「形容詞」「形容動詞」「他の副詞」にくっついて、意味を詳しく説明してくれるんです。
副詞の定義
ではいつものように、副詞を定義することから始めましょう。十品詞分類表を上から順番になぞっていきます。
副詞とは、主に動詞・形容詞・形容動詞(用言)を修飾し、それ自体で意味の通じる自立語で活用がなく、それを含む文節が修飾語になることができ、物事の様態や程度や呼応関係などを表すことばをいう。
ものごとの様態とは、すなわち様子のこと。例えば、
「私は泳ぐ」という主語-述語の関係の成り立つ文に、泳ぐ様子を伝える「ゆっくりと」を補うと「私はゆっくりと泳ぐ」となります。この「ゆっくりと」が様態を表す副詞です。
程度とは、物事の性質や価値を量的に考えたときの、その大きさや度合のことを指します。例えば、
「彼はサッカーが好きです」という主語-目的語-述語の関係が成り立つ文に、好きの度合いを伝える「とても」を補うと、彼がどれくらいサッカーのことが好きなのかを伝えることができます。これが程度を表す副詞です。
『呼応(こおう)』という言葉はたいへん興味深いです。簡単にいうと「ツーと言えばカー」の関係、もっと具体的にいうと「○○といえば、△△だ」と連想させる関係のことです。例えば、
「ドイツといえば、じゃがいもとビールとソーセージ」といった具合です。
マニアックな知識ではなく、だれもが普通に知っている関係であることがポイントです。この呼応関係を想起させる言葉もまた副詞です。
例えば、
「おそらく明日は雨が降る」と聞いたら何か違和感を覚えませんか?
「おそらく」という言葉は推量を表します。それなのに文末が「降る」と断定調だと耳にした時「あれ?」と思う。正しくは
「おそらく明日は雨が降るだろう」とすべきです。
この「おそらく ~ だろう」の関係を『呼応』といいます。そして「おそらく」が呼応の副詞と呼ばれるものです。
副詞の分類
副詞をその性質から3つに分類するのが一般的です。すなわち、
1.様態の副詞 … 主として動詞を修飾し、そいの動作や作用がどのような状態・様子であるかをくわしく説明するもの。
2.程度の副詞 … 主として用言を修飾し、物事の性質や様子がどのような程度・度合であるかをくわしく説明するもの。
3.呼応の副詞 … ある副詞が使われると、それを受ける述べ方が決まっているものがある。この場合の副詞を呼応の副詞という。
別名「陳述の副詞」「叙述の副詞」ともいう。
です。
4番目として指示の副詞を加える場合もあります。
4.いわゆる『こそあど言葉』の一種で、動作や行為を指示する働きを有する副詞。
具体的には、「こう」「そう」「ああ」「どう」のことをいいます。
具体例を紹介しましょう
1.様態の副詞
① 彼は甘い誘い話をきっぱりと断った。 ☜ 断り方を記述している
② ひそひそと噂話をし始めた。 ☜ し始めた様子を伝えている
③ 社長はようやく重い腰を上げた。 ☜ 腰を上げる動作の様子を伝えている
2.程度の副詞
① 彼女はフランスが多少話せる。 ☜ どれくらいフランス語が話せるのかを記述している(動詞を修飾)
② その結論の出し方は、はなはだ疑問だ。 ☜ 疑問に感じる度合いを伝えている(形容動詞を修飾)
③ 最近体調がすこぶる良い。 ☜ 体調の良さがどの程度のものなのかを記述している(形容詞を修飾)
④ 祖母はとてもゆっくりと歩く。 ☜ ゆっくりの程度がいかほどなのかを記述している(他の副詞を修飾)
3.呼応の副詞
① 当然、彼もパーティーに来るはずだ。(断定)
② 兄は決して嘘をつかない。(否定)
③ 賞をもらってもちっとも嬉しくない。(否定)
④ そんな話はとうてい信じられない。(否定)
⑤ まさか、Aチームが勝つことはないだろう。(否定)
⑥ 今夜の月はまるで饅頭みたいだ。(比喩・たとえ)
⑦ 彼の態度はあたかも優勝したかのようだ。(比喩・たとえ)
⑧ もし雨が降ったら、遠足は中止だ。(仮定)
⑨ たとえ槍が降っても、私はその会合に出席します。(仮定・譲歩)
⑩ なぜこんなに簡単な問題が解けないのか。(疑問)
⑪ どうして私の話が信じられないのか。(疑問)
⑫ どうぞおあがりください。(願望)
⑬ ぜひ私どもの商品をお試しください。(願望)
⑭ どうかこの国の実情を、母国に戻ったら伝えてほしい。(願望)
⑮ こんなに難しい問題をどうして小学生が解くことができようか、いや解けまい。(反語)
4.指示の副詞
① ああ言えば、こう言う。
② そうするのが一番良い。
③ この問題はどう解けばよいのだろうか。
副詞が修飾するのは用言と他の副詞だけか?
副詞は通常、用言を修飾することばと言われますが、別の副詞を修飾することがあります。
「とてもゆっくりと話す」のような場合です。程度を表す副詞「とても」が別の副詞「ゆっくりと」を修飾しています。
もう一つのパターンはなんと!!副詞が名詞を修飾する場合です。日本語以外の言語ではまず見かけないパターンかと思われます。
例えば、「ちょっと前に出てください」
「ちょっと」という程度を表す副詞が「前」という名詞を修飾しています。
また「ずっと昔のできごと」
「ずっと」という程度を表す副詞が「昔」という名詞を修飾しています。
気が付きましたか?
副詞が名詞を修飾する場合には決まったパターンがあります。それは、
・副詞は「程度を表す副詞」に限られる
・名詞は場所・方向・数量・時間など、空間的・時間的な広がりに関係のあるものに限られる
以上の副詞の修飾は非常にまれな使い方ですので、頭の隅にでも置いておきましょう。
擬声語や擬態語は品詞でいうと何か?
擬声語とは、動物の音声や物体の音響を言語音によって表した語。すなわち「声まね」です。例えば、
「雨がざあざあ降る」の「ざあざあ」や「犬がわんわん鳴く」の「わんわん」が挙げられます。
擬態語とは、物事の状態・身ぶりを、それらしく表した語。すなわち、動作や表情などをそれらしい言葉に置き換えている言葉です。例えば、
「赤ちゃんがにっこりとほほ笑む」の「にっこりと」や「敵の攻撃をひらりとかわす」の「ひらりと」が挙げられます。
こうした擬声語や擬態語はすべて副詞です。しかも様態を表す副詞となります。
副詞を作文に用いる場合の注意点
作文のテクニックの一つに、修飾語と被修飾語との関係を明確にするというのがあります。修飾語がなにを修飾しているのか分かりにくいと、文章の読み手に誤解を与えかねません。そうした失敗を避けるための工夫は「修飾語と被修飾語ははならかせておくな」です。
例えば、
「ぼくは十分に彼がクラスのみんなに丁寧に解説したことが理解できた」の文で、副詞「十分に」は何を修飾しているのでしょうか?
「十分に」は「理解できた」の程度を表す副詞です。なので被修飾語は「理解できた」となります。しかし「十分に」と「理解できた」との間が開いているので、この文は多少読みにくいです。ならば修飾語と被修飾語を近づければよいのです。
「ぼくは彼がクラスのみんなに丁寧に解説したことが十分に理解できた」とすれば、「十分に」がなにを修飾しているのか一目瞭然ですね。
副詞の使い方にちょっと気を配るだけで、格段に読みやすい文章を書けるようになります。作文のときに副詞の使い方を意識してみてください。
今回の解説はここまでとなります。
いつものように確認プリントを配布しますので知識を確認してみてください。
15 副詞①.pdf - Google ドライブ
15 副詞②(正誤問題).pdf - Google ドライブ