【動詞の活用の種類による分類】
動詞は、さまざまな切り口あるいは焦点の当て方で分類ができます。
これまでに学習したのは、活用の種類による分類です。
すなわち、活用の仕方に応じて
① 五段 ②上一段 ③下一段 ④カ行変格 ⑤サ行変格
活用の5つに分類しました。
今回はその他の分類方法をご紹介します。
【自動詞と他動詞】
まずは目的語を取るか取らないかで分類する方法です。
「目的語」ということばが分かるようで、実はなかなか説明できませんね。
例えば、「ぼくは見る」といきなり言われたら、あなたはきっと「何を見るの?」と尋ねたくなるでしょう。これは動詞「見る」の対象がないと文意が通じないことから生ずる疑問です。
また、「兄は買った」と言われたら、あなたはきっと「何を買ったの?」と尋ねたくなるでしょう。動詞「買う」の対象が分からないと、結局意味が通じない文になってしまいます。
ここで「対象」と書いたものが目的語です。
すべての文に目的語(対象を指すことば)が必要なのでしょうか?
答えはNoです。絶対に必要なものではありません。
例えば、「母はキッチンにいる」という文に対象を表すことばはありません。なぜなら「いる」という動詞が目的語を必要としないからです。
そう、目的語を必要とするかどうかは動詞によって決まるのです。
そこで、目的語を必要とする動詞を他動詞といい、目的語を必要としない動詞を自動詞ということにしました。
ときどき他動詞は「~を」を伴う動詞のことをいい、「~を」が含まれない文の中にある動詞は自動詞である、と解説している参考書があります。
では次の文中の動詞は自動詞ですか?
(例)私たちはジュースが飲みたい。
ポイントは「飲む」という動詞ですが、やはり「~を」の目的語がないとはっきりしない文になりますね。この例文は
(例)私たちはジュースを飲みたい。
としても大丈夫ですね。そう、「飲む」という動詞は目的語を必要とする他動詞なのです。「~を」が文中に無いからといって自動詞だ、と早合点してはいけません。
【可能動詞】
次の分類はノーマルな動詞か、それとも動詞そのものの中に「~できる」という可能の意味合いを含んでいる動詞か、による分類です。
動詞そのものの中に「~できる」という意味を含む動詞としては、例えば
「読む」に対して「読める」が挙げられます。
(例)この本は小学生でも十分読める。
といった具合です。意味は「この本は小学生でも十分読むことができる」となります。
他にもたくさんありますね。
「走る」に対して「走れる」、「切る」に対して「切れる」。
しかし「食べる」に対して「食べれる」、「着る」に対して「着れる」、「見る」に対して「見れる」はどうでしょうか?
私たちの日常会話では普通に使われていますね。実はこれは正確な文法では誤りとされています。そう、これがいわゆる「ら抜き」ことばです。
正しくは、「食べれる」ではなく「食べられる」、「着れる」ではなく「着られる」、「見れる」ではなく「見られる」とすべきです。
どうして「走れる」や「切れる」は良いのに、「食べれる」「着れる」「見れる」はダメなのでしょうか?
それは可能動詞についてのルールがあるからです。
そのルールとは、
可能動詞とはもとの普通の動詞が五段活用動詞でなければならず、これを下一段活用の動詞に変形させたものである。
つまり、もとの普通の動詞が上一段活用や下一段活用の動詞にはそもそも可能動詞が存在しないのです。
では「食べられる」「「着られる」「見られる」とは何者なのか?
(答)それぞれ
「食べる」+「られる」
「着る」+「られる」
「見る」+「られる」
と普通の動詞に可能の意味を表す助動詞「られる」を付けているのです。
「ら抜き」は非常に奥の深いテーマで、大人でも自分の言葉で説明できる人は少ないです。
【補助動詞(形式動詞)】
最後の分類は、本来の意味を持つ動詞か、それとも補足的な役割を果たしている動詞か、による分類です。
本来の意味を有する動詞に対して補助的・補足的な意味しか付け加えない動詞のことを「補助動詞」ないしは「形式動詞」といいます。
これは文節どうしの関係を説明したときに登場した「いる」「ある」「おく」「しまう」「やる」「みる」などの動詞です。
例えば、
「書いている」の「いる」
「書いてある」の「ある」
「書いておく」の「おく」
「書いてしまう」の「しまう」
「書いてやる」の「やる」
「書いてみる」の「みる」
ですね。ポイントは、これらの補助動詞に漢字を当てないことです。ひらがなで書くのが正しいです。
また補助動詞を見分けるポイントですが、動詞と動詞の間に「て(で)」が挟まっているところに注目してください。
なぜ「て」だけでなく「で」もあるのかについては、いずれ音便のところでくわしく解説します。
今回は動詞の分類に着目して解説をしました。
まとめます。
1.活用の仕方による分類
①五段活用 ②上一段活用 ③下一段活用 ④カ行変格活用 ⑤サ行変格活用
2.目的語(対象となることば)を必要とするかどうかによる分類
①自動詞 ②他動詞
3.動詞そのものに「~できる」(可能)の意味を含んでいるかどうかによる分類
①普通の動詞 ②可能動詞
このとき可能動詞の元となる普通の動詞は必ず五段活用で、これを下一段活用にすることで可能動詞ができあがる。
4.本来の意味を有する動詞か、本来の意味を失って補助的・形式的な意味合いしか有しない動詞かどうかによる分類
①本来の動詞 ②補助動詞(形式動詞)
動詞という品詞は一つしかないのですが、これをどの角度から眺めるか、あるいはどの位置から照明を当てるかで見え方が変わってくる・別の切り口から動詞を見ることができるのです。
今回の解説はここまでにしましょう。
Youtubeで動画による解説も試みています。よろしければご覧ください。
いつものように知識の定着度を確認する問題プリントを作成しました。ぜひチャレンジしてみてください。
・可能動詞の問題
13 可能動詞.pdf のコピー - Google ドライブ
・補助動詞の問題