十品詞分類表が完成できたので、これから品詞の各論解説に入ります。
用言から解説を始めることにします。
トップバッターは動詞。
まずは十品詞分類表の上から下へたどって、動詞を定義してみましょう。
【定義】
動詞とは、自立語で活用があり、それを含む文節が述語になることのできる用言で、ウ段の音で言い切ることば。動作や行為、状態の変化などを表す。
今、私は十品詞分類表を頭の中で思い浮かべ、上から順に言葉を選んで定義を書きました。品詞を考える場合、常に十品詞分類表に立ち返るようにしましょう。?と疑問に思うことがあったら、まずはこの十品詞分類表を思い出すのです。すると必ずこの表に答えがあります。
1.動詞の活用形
動詞には活用があるので、下に続くことばによって動詞の形が変わります。
では質問です。全部でいくつの変化形があると思いますか?
さすがに一つの動詞に50の変化形があるとしたら嫌気が差しますね。
例えば「書く」という動詞の変化形がいくつあるのか考えてみましょう。
・書く + ない ⇒ 書かない
・書く + う ⇒ 書こう
・書く + 。 ⇒ 書く。
・書く + ます ⇒ 書きます
・書く + ば ⇒ 書けば
果てしなく続きそうな気もしますが、実はそれほど多くはありません。最大でも10個ほどです。通常は6~8個の変化形があります。その程度のものです。
では、一個一個の動詞の変化形をいちいち暗記しますか?
答えは「不要」です。
動詞の活用変化形を押さえる場合、たった一つの語呂合わせ文を覚えてしまえばおしまいです。
それは、
内容マスター丸解き言葉!(ないようますたーまるときことば!)
「ない」「よう(”う”の場合がある)」「ます」「た」「まる(。)」「とき」「こと」「ば」「!(命令)」を動詞につけて活用変化させてみる、ということです。
先ほどの「書く」を例にとると、
・書く + ない ⇒ 書かない
・書く + う ⇒ 書こう
・書く + ます ⇒ 書きます
・書く + た ⇒ 書いた
・書く + 。 ⇒ 書く。
・書く + とき ⇒ 書くとき
・書く + こと ⇒ 書くこと
・書く + ば ⇒ 書けば
・書く + ! ⇒ 書け!
以上で基本的にすべての活用変化形を表すことができます。
この語呂合わせを紹介すると、ユニークなことが好きな生徒から飛び出すこんな質問を度々受けてきました。
マスター丸解き内容言葉!で覚えてはいけないのか?
いい質問です。
私としては『内容マスター丸解き言葉!』の順でそっくりこのまま覚えてほしい。
なぜか?
その理由は、活用変化の形に名前がついているからです。そしてその活用変化の形のことを「活用形」といいます。ちょっと耳慣れないことばですが、全部書き出してみます。
・未然形とは、まだ起きていないことを指します。
・連用形とは、用言に連なる(つづく)形のことをいいます。
・終止形とは、文の終わりを表します。すなわち、句点(。)の前の形です。
・連体形とは、体言(名詞)に連なる(つづく)形のことをいいます。
・仮定形とは、「もしも~ならば」という仮定の形のことをいいます。
・命令形とは、だれかに指図・命令するときの形です。
どうやったら効率よく確実に覚えられるでしょうか?
ここでまた語呂合わせ文の登場です。
見よ下亀(みよしたかめ)
でどうでしょう?
「見て、下に亀がいるよ」という意味です
・み ⇒ 未然形の「み」
・よ ⇒ 連用形の「よ」
・し ⇒ 終止形の「し」
・た ⇒ 連体形の「た」
・か ⇒ 仮定形の「か」
・め ⇒ 命令形の「め」
を指します。連用形と連体形は「連」の字が共通なので、「用」と「体」で区別しました。
これなら覚えられませんか?
以上の解説から、私としては『内容マスター丸解き言葉!』の順でそのまま覚えてほしいのです。
動詞の活用変化の仕方はたくさんあるように思われがちですが、実際はたったの6つの形しかないのです。
2.動詞の活用の種類
先に紹介した「書く」という動詞ですが、活用の仕方を見て気づいたことがありますか?漢字「書」のあとのひらがなをよく見ると、「か」「き」「く」「け」「こ」がすべてそろっていることに気づくはずです。
五十音図のカ行すべての音が見つかるので、このような動詞の活用の種類をカ行五段活用といいます。
では、すべての動詞が五段活用だと思いますか?
次の動詞を考えてみましょう。
「起きる」
『内容マスター丸解き言葉!』を付けてみてください。
「書く」とは大分ちがった変化をしますね。カ行の音がすべて見られることはなく、代わりに「き」の音がすべての変化に共通しています。
こういう動詞の活用の種類を上一段活用(かみいちだんかつよう)といいます。カ行の音「き」がすべての活用形に含まれますから、正確にはカ行上一段活用といいます。
なぜ上に一段あがるのでしょうか?
理由は簡単で、五十音図のア段・イ段・ウ段・エ段・オ段の真ん中であるウ段を基準にして、「き」の音はそこから一段上がっているからです。
ここまで解説すると鋭い方は「いったいいくつの活用の種類があるの?」と疑問に感じるはず。まったく同感です。実は5種類しかありません。たったの5つしかバリエーションがないのです。驚きですね。
では次に「食べる」の活用変化表を作ってみてください。
『内容マスター丸解き言葉!』を紙に書き出して、食べるを載せていくのです。
以下のようになりましたか?
上一段活用に似ていますが、「べ」の音が共通なのでウ段より一段上ではなく、下に一段さがっています。そう下一段活用(しもいちだんかつよう)といいます。「べ」の音が共通ですから、正確にはバ行下一段活用といいます。
ここまでは動詞の活用の種類として多く見られる一般型を紹介してきましたが、残りの2つは特殊型となります。
まず「来る」の活用変化表を作ってみましょう。
ぜんぜん変化の仕方に規則性が見当たらないことに気づきましたか?
こういう変化の仕方を変格活用といいます。カ行の音が共通であることはまちがいないので、カ行変格活用(かぎょうへんかくかつよう)といいます。
カ行変格活用の動詞は、動詞の数はあまたあれど、なんと!「来る」一語しかありません。これは暗記してください。
最後にやっかいな変格活用の動詞を紹介して締めくくりましょう。
「する」の活用変化表を作ってみてください。
やはり変化の仕方に規則性がありません。しかしながら、サ行の音だけは共通しているのでサ行変格活用といいます。
なぜ活用変化表に「不完全版」と書いたかというと、サ行変格活用は活用の仕方が最も複雑で、『内容マスター丸解き言葉!』だけではカバーしきれないのです。
具体的にいうと、
・する + れる ⇒ される
・する + ず ⇒ せず
といった感じです。「さ」と「せ」が『内容マスター丸解き言葉!』では導き出せない。困ったものです。
そこでもう一つ語呂合わせ文を追加します。
それは、
サ変は二度刺せない
です。
サ変(サ行変格活用)は活用変化が複雑なので二度刺せないのです(笑)
すなわち、「さ」と「せ」を未然形に加えてあげます。
ここまでの解説を踏まえてサ行変格活用の変化表を完成させてみましょう。
私がこれまで生徒たちに繰り返し練習させたのはサ行変格活用動詞です。これをフリーハンドで書けるようになれば、もう他の動詞の活用変化表などお茶の子さいさいです。是非やってみてください。
さて、サ行変格活用の動詞も「する」一語なのでしょうか?
いい線行っていますがもう少しバリエーションが豊富です。すなわち、「する」という単体だけでなく「する」のつく複合語も含まれます。
例えば、「旅する」「検査する」「サッカーする」のような動詞です。
ですので、サ行変格活用の動詞は「する」と「○○する」の2種類ある、と覚えておきましょう。
ただし注意が必要で、途中に「を」を挟まない場合のみに複合語と言えますから、
「旅をする」「検査をする」「サッカーをする」はこれに該当しません。
なぜかというと、上の例は文節分けがそれぞれ「旅を / する」「検査を / する」「サッカーを / する」で可能だからです。すなわち、この場合は「する」がサ行変格活用の動詞となります。
複合語についてはまた別の機会で取り上げたいと考えています。ご期待ください。
では最後はいつのように確認テストを配布しますので、是非チャレンジしてみてください。
【動詞の活用形に関する問題】
【動詞の活用の種類に関する問題】