先日お届けしたYoutube動画『これ一冊! 史上最強のドイツ語テキスト』が好評で、久々の1,000回超え再生を記録しました。
たくさんの方に視聴していただき感謝します。動画を配信して良かったです。
すると次のようなメッセージが複数届きました。
「どんな辞書を使ってドイツ語を学んだのですか?」
「おススメの辞書を紹介してください」
今回はこの質問に答えます。
ただし、私はコロナパンデミックが起きる前年2019年に日本に帰って以来これまで一時帰国していないので、最新版のチェックをこの目で行えていないことをご了承ください。
あくまで私が留学するときにドイツに持参したり、その後ドイツ語の学びを深めたりするために使ってきた(今も使っている)辞書たちを紹介します。
入門者用に2冊と上級者用に1冊をメインに紹介します。
Youtubeでも動画で解説をしています。
【入門者用】
1.アクセス独和辞典 三修社 在間進 著・編集
最も販売実績のある独和辞典です。安定感がありますし、納得の品質です。
【良いところ】
① 入門者から基礎的なレベルの習得を目指す方向けに懇切丁寧な解説
・ 重要語はフォントを大きくしてあり、しかも赤字で書かれていてメリハリがつけられている。
・「話法の助動詞」や「否定」など、重要な品詞や文法事項に特設ページが設けられている。
・ 随所にイラストや写真が散りばめられていて、アクセントのついた辞書構成となっている。
② 重要語について、格変化や人称変化などをすべて掲載してある。
・ 入門者が名詞の性や人称に応じた格変化をいちいち調べるのは大変。この辞書には重要な名詞の性や人称格変化の形が余すところなく掲出されている。
・ 動詞についても、現在形と過去形の人称変化一覧表が掲出されており、学習がはかどる工夫がされている。
③ 前つづりに関する詳細な説明
在間先生の専門が前つづりの研究と伺っています。ご専門の分野なので説明がくわしいです。ドイツ語の学習が深まった段階で、一つ一つの前つづりについての解説を読み直したのですが、大きな発見がありました。お勧めの箇所です。
④ 巻末に掲載の『不規則変化動詞の一覧表』が秀逸
自分がA2レベルでドイツに留学した頃、語学学校が終わるとフライブルク大学の図書館でひたすら不規則変化動詞の3基本形(不定形-過去形-過去分詞形)をノートに書き写して覚えたのを思い出します。その時に重宝したのがこの『不規則動詞変化表』でした。必要十分な数の不規則変化型動詞を一覧で掲載してあります。
⑤ 留学時代に最も重宝したのが巻末にある『和独辞書』
私がドイツに留学した2005年当時、スマホはこの世に存在しませんでした。多くの日本からの留学生が電子辞書を持参していました。私は電子辞書と紙の辞書の両方を持ってきましたが、電子辞書が私の学びのスタイルに合いませんでした。
ドイツ語学習の入門段階では日本語からドイツ語への変換がどうしても必要で、そうなると和独辞典も必要だったのですが、紙ベースの和独まで持ち歩くのは不可能でした。その時ものすごく役に立ったのがこの辞書の『和独』編。
「『和独』があって良かった~」と思った経験は一度や二度ではなかったです。
今の時代に「独和辞典の巻末に和独がついているか否か」が重要になることはないでしょう。ここは三修社さんへの感謝の気持ちを伝えるために書き残しておきます。
⑥ 改訂頻度が高い
ドイツ語の辞書で定期的に改訂し、版を増やしている辞書はほとんどありません。
アップデートが行われれば、昨今重要度が急激に増している「人工知能」領域や医療・介護関係の用語もカバーされることになります。
私にとってはとても重要な辞書選びのポイントです。
⑦ 外装(カバー)の強度
簡単に外れません・破けません。ドイツ留学時代、毎日リュックサックに入れて持ち運びましたが壊れませんでした。持ち運びする人にとっては極めて大事なポイントです。
【悪いところ】
欠点が見当たらないです。
2.アポロン独和辞典 同学社 根本道也 著
私が人生で初めて購入したドイツ語辞典がこれ。恩師の先生が勧めたもので、即購入した思い出の一冊です。
【良いところ】
① シンプルで飽きのこないレイアウト
アクセス独和よりもすっきりした見やすさが特徴。アクセス独和が懇切丁寧な解説ゆえに濃厚な印象を受けるのに対し、こちらはシンプルで見やすい印象を受けます。
私は辞書を一生の財産とは位置づけず、あくまで消耗品と捉えており、重要語や役立ちそうな例文にハイライトをマーカーで付けますが、こういうタイプの学習者にはアポロンの方が自分用に作り替えやすいです。
② GeRに基づく単語のレベル表記
GeR (Gemeinsamer europäischer Referenzrahmen für Sprachen) = ヨーロッパ言語共通レファランスフレーム は、欧州で話される言語(ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、英語など)のレベルを共通の基準で定めようというもの。
例えば、
・簡単なあいさつができる ⇒ A1
・市場で買い物ができる ⇒ A2
・家財道具が壊れたときに職人を呼び、修理させる一連のやり取りができる ⇒ B1
といった具合に、欧州で話される言語間でA1やB1のレベルを統一しようとする試みのことです。
このGeR基準でA1, A2, B1の3つのカテゴリーに分類される単語に表記がついています。その他アポロン自体が単語の重要度を5段階で分類しています。
つまり、辞書で引いた単語のレベルが一瞬で分かるというメリットがあります。
③ Prosodic Writing 導入による文の強勢を把握可能
文字の大きさ・太さ・形で文の強勢(アクセント)を表現するProsodic Writingを導入し、視覚的に文強勢を捉えるという画期的試みを行っています。ただし、この試みは100例文についてのみ。また音声との連動も図られており、実際に耳で聞くとどういう風に聞こえるかも学べるようになっています。
④ 巻末に『不規則変化動詞一覧表』を掲載
これはアクセス独和同様にすばらしい点。コンパクトに、かつ必要十分な量の不規則変化動詞についての意味や3基本形が載っています。入門者にとって不可欠な学習領域だけに親切設計となっています。
⑤ 巻末の付録の充実
よく使う日常会話の例やメールの書き方など、痒いところまで手が届いた内容となっています。巻末付録だけを読んでも面白いし役に立ちます。
⑥ 改訂の頻度が高い
これもアクセス独和と同様、私にとっては超重要ポイント。
私がドイツ語の学習を始めたのは2003年ですが、その時購入したのは第2版でした。現在の最新刊は第4版。同学社さんのドイツ語辞書制作への意気込みを感じます。
ドイツ語の日本における位置づけが下がってしまっている残念な現状にあって、定期的に版を改めている出版社に敬意を表します。
今度日本に帰ったら間違いなく買ってドイツに戻ります。
【残念なところ?】
第2版は外装が外れやすく、補修しながらごまかしごまかし使いましたが、最後はボロボロになって最初と最後のページから剥がれ落ちてしまいました。
今の版はこの点が改善されていることを望みます。
内容的には文句なしです。
【上級者用】
3.独和大事典 小学館 岩崎英二郎ほか 著
上級者向けにはこの辞書を超超超オススメします。
現在日本で発売されている独和辞典の最高峰と言えます。解説が丁寧で、何でも書いてある印象です。「どうにも意味がつかめない」「自分の知っている意味では上手く解釈しきれない」などの場面に出くわすと、この辞書を引いています。
レベルとしてはB2の学習を始めたら買いましょう。B1レベルの学習者には荷が重いし、この辞書を引くと時間が掛かってしまうと思います。初学者にではなく、基礎固めが終了している方に強く推奨します。
この辞典はそもそもが図書館などに置くような大判のものです。それを私のような個人用にコンパクト版が発行されています。私は皆さんにコンパクト版をお勧めします。ぶ厚いし文字も細かくなってしまいますが、53歳の私が今でも十分に読めます。多少は重たいですが持ち運びもできます。是非書店で手に取ってみてください。
唯一の欠点は、現在の最新刊が第2版ですが、これが刊行されたのは四半世紀前の1999年11月。その後アップデートがされていません。今も現役で使っていますが、古めかしさは一切感じません。しかし、この四半世紀のうちに生まれた新しい言葉に対応できていないのは残念ですね。
オススメの独和中辞典はないのか?
・ドイツ語を取り巻く環境が激変
⇒ 私が最初の大学に入学した1990年には、大学の第二外国語といえばドイツ語かフランス語を意味しました。たくさんの学生がドイツ語に触れたのです。
しかし最近の大学の第二外国語といえば、スペイン語、中国語、韓国語でしょう。
ドイツ語を第二外国語として学ぶ学生数が激減しました。
こうなると辞書も売れません。絶対的に需要が減ってしまいました。
・紙の辞書はもはや歴史的遺産のようなもの
⇒ スマホの登場で、わざわざ重たい紙の辞書を持ち運ぶ人はほとんどいなくなってしまいました。
以上のことを踏まえると、ドイツ語の辞書を定期的に改訂しアップデートをしている出版社には感謝の言葉しかありません。
ドイツ語の個人レッスンをしていて思うことですが、初学者レベルを超えられる学習者は全体の1~2割程度ではないでしょうか?
そうなると、中辞典を刊行しても売れません。今回紹介した『独和大事典』は内容的にすばらしい!の一言です。しかし、四半世紀経っても改訂されません。これが厳しい現状だと思います。
ということで、独和中辞典でのオススメを紹介しませんでした。
このブログ記事を読んでいただいた方へ
是非書店に行ってさまざまなドイツ語辞典を実際に手に取って中身を確認してみてください。辞書の好みは人それぞれ。ご自身が辞書を開いて「あっ、これいいな」「この辞書は見やすいな」「文字フォントや大きさ、行間などが自分好みだな」と思ったら、それがあなたにとってのベストな辞書です。
紙の辞書の味わい
電子辞書やスマホ検索とちがう紙の辞書の魅力とは、自分の探している単語の周辺にある他の意味や例文、他の単語も視界に入ることです。思いも寄らなかった新たな出会いがあるのが、紙の辞書を引く楽しみであり喜びです。
是非、アナログの魅力も知ってほしいです。
Youtubeでもドイツ語辞書を紹介しており、実際の映像も見ていただきました。
その中で紹介した辞書をここに揚げておきます。
Youtube動画はこちら☟
4.新現代独和辞典 三修社 ロベルト・シンチンゲル 編
三島由紀夫が東大で師事したのが編者のロベルト・シンチンゲル先生です。
同じ三修社から刊行の『アクセス独和辞典』よりもレベルは上。文字は黒色一色で、赤字表記など一切ありません。
この辞書も新装版が2008年4月に発行されてから改訂がされていません。
学習レベルが上がってくると、赤字表記とか不要にも思えるので、こういうスッキリした辞書も良いです。ただし、シンチンゲル先生ご自身が1990年代にお亡くなりになっているので、2008年刊行と言っても新しい言葉に対応しているとは思えないです。
私の手元にあるのは2002年3月刊行の普及版ですが、旧正書法による表記となっています。
巻末に掲載の修辞法と韻律法が私にとっては大変意義深いです。
5.ドイツ語類語辞典 三修社 中條宗助 編著
kennen, wissen, Bescheid wissen, bekannt seinの違いはなにか、などについて詳しく解説がされています。大型書店で偶然目に留まり即購入した一品です。時間のあるときにパラパラとめくって興味深い類語を見つける楽しみがあります。
三修社には面白い辞書がたくさんありますね。
6.アクセス和独辞典 三修社 在間進 編
ドイツの企業で働くようになると、和独辞典を引く機会がめっきり減ってしまいます。
DeepL翻訳を使ってザックリ日本語からドイツ語への翻訳をすると、あとはそこから得た文の構成を活かして適語を選び、独文を完成させてしまうからだと考えています。
ということで、私は日常の暮らしの中で和独辞典をほとんど使いません。
しかし、独和辞典とセットで和独辞典も用意したい方にはこの辞書をオススメします。
理由は、
① ひらがなによる検索
⇒ 実はローマ字検索による和独辞典もあります。私には使いにくい(ローマ字検索に対する違和感がある)。
② 例文が豊富
⇒ 活用の仕方によっては、和文独作文対策に使えると思います。
ここで紹介されなかったもので、「私のお気に入りはこれだ!」という辞書がありましたら、ぜひ教えてください。次回日本に帰ったときに実物を手に取ってみます。
最後に、今回のブログで紹介した辞書のamazonリンクを付けておきます。
興味のある方は是非書評や他の購入者の方のコメントを参考にしてみてください。
1.アクセス独和辞典 三修社 在間進 著・編集
2.アポロン独和辞典 同学社 根本道也 著
3.独和大事典 小学館 岩崎英二郎ほか 著
4.新現代独和辞典 三修社 ロベルト・シンチンゲル 編
5.ドイツ語類語辞典 三修社 中條宗助 編著
6.アクセス和独辞典 三修社 在間進 編